2025年11月21日に公開された細田守監督の最新作『果てしなきスカーレット』。『竜とそばかすの姫』から4年ぶりとなる本作は、公開直後からSNSで賛否両論の嵐となっています。
「今年ワースト級」という酷評から「時をかける少女以来、一番好きな細田作品」という絶賛まで、評価が真っ二つに分かれる本作。この記事では、実際に観た方々の感想をもとに、観るべきかどうかの判断材料をお届けします。
『果てしなきスカーレット』基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公開日 | 2025年11月21日(金) |
| 監督・脚本・原作 | 細田守 |
| 制作 | スタジオ地図 |
| 上映時間 | 111分 |
| 配給 | 東宝 |
本作は、シェイクスピアの四大悲劇の一つ『ハムレット』をベースにしたオリジナルストーリー。16世紀デンマークの王女が「死者の国」で繰り広げる復讐と許しの物語です。
豪華声優キャスト陣
本作の大きな特徴は、実力派俳優たちが声優として集結していること。
主要キャスト
- スカーレット:芦田愛菜
- 聖(ひじり):岡田将生
- クローディアス:役所広司
- ガートルード(母):斉藤由貴
- ポローニアス:山路和弘
- コーネリウス:松重豊
- クローディアス側近:吉田鋼太郎
- レアティーズ:柄本時生
- 少女:白山乃愛
- 老婆:白石加代子
特に芦田愛菜さんは声優だけでなく主題歌も担当しており、その歌唱力も話題となっています。岡田将生さんは長編アニメでの声優初挑戦となりました。
あらすじ(ネタバレ含む)
物語の始まり
国王である父を叔父・クローディアスに殺された王女スカーレット。復讐を果たそうとするも失敗し、気がつくと「死者の国」で目を覚まします。
死者の国とは
死者の国は、人々が略奪と暴力に明け暮れる狂気の世界。力のない者や傷ついた者は「虚無」となり、その存在が消えてしまうという過酷な場所です。時代も地域も関係なく、様々な死者が存在しています。
聖との出会い
そんな中、スカーレットは現代日本からやってきた看護師・聖と出会います。時を超えて出会った二人は、最初は衝突しながらも、共に旅をすることに。
戦うことでしか生きられないスカーレットと、戦うことを望まず誰にでも優しく接する聖。その温かい人柄に触れ、凍りついていたスカーレットの心は徐々に変化していきます。
見果てぬ場所を目指して
一方、クローディアスは死者の国で誰もが夢見る「見果てぬ場所」を見つけ出し、民衆を扇動して支配していました。スカーレットと聖は、次々と現れる刺客と戦いながら、クローディアスを探して見果てぬ場所を目指します。
結末(重大ネタバレ)
物語のラストで、実はスカーレットは死んでいなかったことが判明します。彼女は聖と離れたくない、死者の国に残りたいと主張しますが、聖は「”生きたい”と言え」と諭します。
シェイクスピアの『ハムレット』で有名なセリフ「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」に対し、本作は「生きたい」という意志を持って生きることの大切さを答えとして提示しています。
賛否両論!観た人の感想まとめ
批判的な意見
Filmarksでの評価は2.9点(4,029件のレビュー)と、細田守作品としては厳しい評価となっています。
脚本・ストーリーへの批判
多くの批判は脚本に集中しています。「シェイクスピア原作でここまで酷い内容にできるのか」「支離滅裂で核となるメッセージも底が浅い」といった厳しい声が見られます。
唐突なダンスシーン
公開前から話題になっていた中盤のダンスシーン。「どこで挟まるのかと思っていたら中盤に急に出てきて笑ってしまった」「絶対にいらない」という意見が多数。細田守監督自身が作詞した歌についても「『愛』『愛』とうるさい曲」と評されています。
世界観の説明不足
死者の国の設定についても「食糧問題は?」「なぜ現代人がほとんどいないのか」など、ツッコミどころが多いという指摘があります。
興行面での苦戦
公開初日からガラガラの劇場が報告されており、「IMAX上映で3人しかいなかった」「3連休なのに8人」といった声も。最終興行収入は10〜15億円程度との予想もあり、前作『竜とそばかすの姫』の66億円からは大きく下回りそうです。
肯定的な意見
一方で、熱心に支持する声も存在します。
映像美は圧倒的
「映像のクオリティは凄まじい」という点は、批判派も認めるところ。細田監督が「ストーリーボードやコンセプトアートに見えるかもしれないが、この絵がそのまま動く」と語った通り、美麗な映像に仕上がっています。
芦田愛菜の演技と歌
主人公スカーレットを演じた芦田愛菜さんの演技は高く評価されており、主題歌の歌唱力も絶賛されています。
テーマへの共感
「分断と戦争が続く現代へのメッセージとして受け取った」「復讐ではなく許すことの大切さを描いている」と、作品のテーマに共感する声もあります。
『オマツリ男爵』を思い出す
細田守ファンの中には「貴方はやはりこちら側の人」と、かつての異色作『ONE PIECE オマツリ男爵と秘密の島』を思い出し、本作を評価する声もあります。
『果てしなきスカーレット』を観るべき人・観なくていい人
こんな人におすすめ
- 細田守監督の新しい挑戦を見たい人
- 映像美を重視する人
- シェイクスピア『ハムレット』のアレンジに興味がある人
- 芦田愛菜さんのファン
- 「復讐と許し」というテーマに興味がある人
こんな人は注意が必要
- 『時をかける少女』『サマーウォーズ』のような作風を期待している人
- 脚本の整合性を重視する人
- ミュージカル的な演出が苦手な人
- 明るい雰囲気のアニメが好きな人
細田守監督作品の興行収入比較
本作の興行成績を過去作と比較してみましょう。
| 作品 | 公開年 | 興行収入 |
|---|---|---|
| 時をかける少女 | 2006年 | 約2.6億円 |
| サマーウォーズ | 2009年 | 約16.5億円 |
| おおかみこどもの雨と雪 | 2012年 | 約42.2億円 |
| バケモノの子 | 2015年 | 約58.5億円 |
| 未来のミライ | 2018年 | 約28.8億円 |
| 竜とそばかすの姫 | 2021年 | 約66億円 |
| 果てしなきスカーレット | 2025年 | 予想:10〜15億円? |
『未来のミライ』で一度落ち込んだ興行収入を『竜とそばかすの姫』で回復させましたが、本作は厳しい船出となっています。
注目ポイント:2034年の渋谷
作中で聖が「祝祭の歌」を唄うシーンでは、スカーレットの意識が未来の日本へ飛びます。公式設定では「2034年/渋谷」とされており、実際の渋谷再開発(2034年完成予定)のイメージを元にしたデザインになっています。
この現代渋谷の描写については「意味がない」「唐突すぎる」という批判がある一方、「世界市場を意識した演出」という見方もあります。
まとめ:観るかどうかの最終判断
『果てしなきスカーレット』は、細田守監督がこれまでの作風から大きく舵を切った野心作です。16世紀のデンマーク王女を主人公にし、ダークなファンタジー世界を描くという挑戦は、評価が分かれて当然とも言えます。
映像美は間違いなく一級品。111分という上映時間で、スタジオ地図の技術力を存分に堪能できます。
脚本については期待値を下げておくべき。シェイクスピアの『ハムレット』をベースにしながらも、独自の解釈と展開に好みが分かれます。
「変な映画だけど嫌いじゃない」という評価が最も適切かもしれません。細田守監督の作品を追い続けてきたファンであれば、その変化を見届けるという意味でも観る価値はあるでしょう。
ただし、万人受けする作品ではないことは確か。事前に賛否両論があることを理解した上で、映画館に足を運ぶことをおすすめします。
FAQ:よくある質問
Q. 子供でも楽しめますか?
A. 本作は子供向けではありません。ダークなファンタジー世界観、復讐というテーマ、戦闘シーンなど、大人向けの内容となっています。
Q. 前作『竜とそばかすの姫』を観ていなくても大丈夫?
A. 完全なオリジナルストーリーなので、過去作を観ていなくても問題ありません。
Q. IMAXや特別上映で観るべき?
A. 映像美を堪能するなら大きなスクリーンがおすすめですが、内容に不安がある場合は通常上映で様子を見るのも一つの選択肢です。
Q. シェイクスピアの『ハムレット』を知らなくても大丈夫?
A. 基本的なストーリーは映画内で完結しているので、原作を知らなくても理解できます。ただし、知っていると細かいオマージュや改変を楽しめます。
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